今春、一冊の本を出版させていただきました。『認知症の「私」が考えること 感じること~介護施設の現状と希望~』という本です。私は弁護士ですが、成年後見人として10年以上にわたり、高齢者の皆さまと寄り添いながら、介護施設の現状を見てきました。
人生の最期、誰もが幸せでありたいと願う時期に迎える高齢社会の現実。施設内での人間関係や、自分の家族との人間関係に悩む高齢者の皆さま。「認知症だから」と自分の意思とは関係なしに施設入所が決まる事実。今、日本の高齢社会はさまざまな問題に直面しています。
高齢者の皆さまには、70年、80年、90年と生きてきた歴史があります。夫婦のこと、子どもたちのこと、会社のこと、自分の子どもの頃のことや学校時代のことなど、それぞれに違った歴史を生きてきました。この歴史を知ることなく、高齢者の皆さまに寄り添っていくことはできないと考えています。認知症を抱えた方であっても。わずかな情報を糸口として、ご本人の意思や意見が分かる場合があります。
本書は、高齢者施設の現状を中心にまとめました。施設職員さんが聞けば、耳が痛いところもあります。にもかかわらず、多くの施設関係者に読まれている、時事通信社発刊の「厚生福祉(第5824号/2011年6月21日)」の書評欄にご紹介いただきました。「高齢者の皆さまに幸せを」と、真摯に取り組まれている現場があることも忘れてはなりません。
人生の最期の最期が幸福でない、そんな社会はあってはならないと強く強く思います。
皆さんの声をたくさんお聞かせください。